「気をつけて歩く」だけでは、転倒は防げません
こんにちは、Reha Tripです。
最近の札幌は、日中の雪解けと夜間の凍結で、路面は鏡のようにツルツルな状態(ブラックアイスバーン)ですね。
「転ばないように気をつけて」とよく言いますが、実は精神論だけでは転倒リスクは下がりません。
今回はリハビリの専門家(作業療法士)として、「転倒」という物理現象を科学的に分解し、転ばないための身体操作について解説します。
1. 物理学で見る転倒:「摩擦円」と「剪断力」
そもそも、なぜ人は滑るのでしょうか。
鍵を握るのは、靴底と路面の間の「摩擦係数(μ)」と、着地した瞬間に働く「剪断力(せんだんりょく)」です。
⚠️ 通常歩行(踵着地)が危険な理由
私たちが普段アスファルトの上で行う「踵(かかと)からの着地」は、物理的に見ると「前方向への強いブレーキ力(剪断力)」を生み出しています。
夏場はこの力が摩擦力以内に収まりますが、摩擦係数が極端に低い氷上では、このブレーキ力が摩擦の限界を超え、足が前方へスリップしてしまうのです。
2. バイオメカニクスで見る対策:「支持基底面」の制御
では、どうすれば良いのでしょうか。
身体運動学(バイオメカニクス)の視点からは、以下の2点が極めて重要になります。
① 重心を「支持基底面」の真上に置く
「支持基底面(Base of Support)」とは、両足が地面に接している範囲のことです。
転倒しないためには、常に身体の重心(おへその下あたり)を、この支持基底面の垂直線上に維持する必要があります。
歩幅を大きく広げると、重心が足の接地点から大きく離れる(=モーメントが発生する)ため、バランスを崩した瞬間の復元が不可能になります。
いわゆる「ペンギン歩き」が推奨されるのは、重心の移動距離を最小限にし、常に支持基底面の中に重心を留めるための理にかなった戦略なのです。
② 足関節の底背屈を固定した「フラット接地」
踵から入るのではなく、足裏全体で垂直に荷重する「フラット接地(Flat Footing)」を意識してください。
これにより接地面積を最大化し、圧力を分散させることで、実質的な摩擦力を高めることができます。
3. 結論:今日からできる「転ばない身体操作」
難しく書きましたが、意識すべきは以下の3点です。
- 歩幅(ストライド)を極端に狭くする(剪断力を減らす)
- 足裏全体でスタンプを押すように歩く(垂直荷重)
- 膝をわずかに曲げた状態(軽度屈曲位)を保つ(衝撃吸収と重心低下)
「理屈はわかったけど、やっぱり怖い」という方へ
頭で理解していても、高齢の方や麻痺のある方にとって、冬道の移動は命がけのミッションです。
「転倒骨折」は、その後のQOL(生活の質)を大きく下げてしまいます。
Reha Tripの同行サービスは、玄関から目的地まで、OTが身体機能に合わせた介助を行いながら移動します。
「無理をして歩く」のではなく、「安全を買う」という選択肢も、ぜひ検討してください。




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